医療経営

高齢社会の到来とともに、医療(介護・福祉含む)の重要性はますます高まっていますが、一方でその提供にかかるコストも高まっています。そのため、質が高く効率的な医療の提供が求められています。その際、患者・利用者に直接実際に医療提供しているのは医療機関ですので、費用対効果の高い医療提供の実現には、医療機関の経営管理が極めて重要です。日本の医療機関の中心を担う医療法人を中心とした医療機関の経営に関する研究を通じて、今日の課題に対する解決策を模索していきます。

HIAS Health研究員・HIAS Health客員研究員

研究プロジェクト

   

社会保障・財政

国民医療費が40兆円を越えるなど増加する医療費の「適正化」が喫緊の課題になっています。医療は我が国の財政にとって最大のリスクなのです。そのため医療の「質」を損なうことなく、医療資源(予算)の配分の効率化が求められます。「地域差」に見える化と非効率な地域差の解消を進めていくことです。合わせて負担の構造が逆進的で、正規雇用の阻害要因である社会保険料の見直しも必須です。EBPM(科学的な根拠に基づく政策立案)を軸にこうした政策課題に取り組みます。

HIAS Health研究員・HIAS Health客員研究員

研究プロジェクト

本研究では、個人の行動や健康の変化を長期間にわたって把握できるパネル調査を用いることにより、第1に、健康の社会的決定要因(social determinants of health; SDH)が健康に影響を及ぼす経路を分析する。とりわけ注目するのは、就業行動や社会参加活動の変化が健康アウトカムや疾病リスクに及ぼす影響である。第2に、健康がSDHに及ぼすフィードバック効果を解明する。SDH研究はこれまで、SDH→健康という因果関係の把握に力点を置いてきたが、両者の間の二方向的な性格を重視した分析を行う。     現在の日本の社会保障制度、そして、それを支える財政は、持続可能性の観点から大きな問題を抱えている。高齢者の数は増え続け、高齢化率は30年後には40%近くに達すると推計されている。年金は2004年の改革で制度的には持続可能な仕組みが導入されたが、医療については、そのような制度設計はまだ行われていない。高齢化の深化に伴い、高齢者の声が反映されやすい民主主義体制(いわゆるシルバー・デモクラシー)への移行がさらに進み、医療・介護の充実に対する国民の声がさらに高まることが予想される。 そのような状況で、持続可能性を確保するためには、健康リスクへのネットワーク的対応を充実させる取り組みが重要になってくる。そして、日本社会の持続可能性を脅かしている根本的な原因が少子化にあることを踏まえると、高齢者の健康リスクのみならず、妊婦や子どもの健康リスクや子育てへの不安を低下させることで少子化を緩和していこうとする地域での取り組みも注目に値する。国民全般の健康リスクを低減させるネットワーク的対応の事例の収集・分析なども行いながら、高齢化が進む民主主義社会において社会保障制度の持続可能性を確保するための制度設計のあり方について研究していく。        

医療提供・介護

地域単位での予防医療や介護の取り組みは、厚生労働省が提唱している「地域包括ケアシステム」でも強調されているように、増大する医療費の支出の抑制への重要な方策の一つです。レセプトデータの分析や地方自治体の取り組みの分析・評価を通し、日本のプライマリ・ケア制度や介護保険制度の問題、特に地域医療の特徴と問題点を探り、医療・介護の質の管理と提供を全般的に強化するための提言に向けた研究を行っています。

HIAS Health研究員・HIAS Health客員研究員

研究プロジェクト

本研究は、COVID-19禍の保健・医療サービス提供において、費用負担の仕組み、財源、サービス提供の組成がどのように推移したかについて検証し、異なる制度背景の4カ国で比較することにより、将来の「ヘルスショック」の再発に備え、迅速で効果的な対応を促す制度用件について明らかにする。

アフリカの女性の周産期医療に関し、HIV感染を予防し、出産時の合併症を防ぐため、無症状の性感染症患者を早期診断することが重要である。本研究では、性感染症の診断に関する女性の「声」を計量で集約し、新しく開発された性感染症簡易検査キット(GIFT)の利用において、患者側の受容性を考慮した診療ガイドラインの策定に必要な要点をまとめる。  

本研究の目的は,財政に過度な負担をかけずに、医療の質や国民の満足度を高める医療制度構築に寄与することである。 政府も同じ問題意識を持ち、医療制度改革の一環として、自己負担額を増やし、不要な受診を減らそうとしてきた。しかしこれまでの多くの研究によれば、医療サービス需要の価格弾力性は総じて小さく、個人の意思決定においては他の要素がより重要であることが、近年の行動経済学等の研究で明らかになってきた。特に重要なのが情報の役割である。 そこで本研究では、医療サービスに関する情報の内容や提供の仕方で、医療需要における個人の意思決定はどのように変わるのか、また供給者側もより効率的な診療や処置を行うようになるのか考察する。特に、その分析において非合理な効用関数を持つ消費者や患者がいる市場で効率的な配分を達成するための方策や政策的含意を探る。財政や社会厚生へ与える影響も分析する。  

介護保険および障害福祉サービスでは、高齢者、障害児者などの多様な利用者に対して、同一の事業所で一体的にサービスを提供する共生型サービスが2018年度から導入されることとなった。本研究はこの共生型サービスを切り口として、人々が住みなれた地域で暮らし続けることを前提とした社会において、生活構造に即した介護・福祉サービスをいかに適切に供給していくのか探ることを目的としている。研究目的を達成するため、①地域住民の生活構造に関する分析、②共生型サービス・モデルに関する検討、③高齢の障害者に対する共生型サービスの導入に関する研究、④地域資源が不足する地域での共生型サービスの導入に関する研究という4つの角度から、今後の共生型サービスの課題について検討していく。

日本は諸外国と比べて病床数が多いため、病床あたりの医師数が少なく、入院が長期化 することが大きな課題となってきた。また、病床数という点では現在も2割(16万床)近い 急性期病床が空床である一方で、感染症対策病床(約3万床)すら迅速に確保できなかったことが、新型コロナウイルス対策時にも問題となった。感染症対策に限らず、医療提供体制を地域的に最適化するためには、逆説的ではあるが、「病床を適切に減らす」ことが欠かせない。必要性の低い病床を減らすことは、医療資源(人材等)を必要性が高い分野に配置する余裕につながるからである。そこで、本プロジェクトでは、病床の減床こそが地方創生や病院の経営改善に必要な選択肢となるよう、方法論としての「減床政策モデル・都市計画モデル」を提案する。
本研究では。JMDC社(2021)のJMDC Claims Databaseを用いて、糖尿病・高血圧などの生活習慣病や重大な疾病である脳・心・腎臓疾患の実態に関して新たに分析を行う。これらの疾病の危険因子を分析し、その予防や治療に役立つ知見を得ることを目的とする。。JMDC Claims Databaseは全国の健康保険組合から集められたデータをまとめたものであり、ここでは、3,233,271人から得られた13,157,681件の健康診断結果が含まれている。      

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

全ての人が適切な保健医療サービスを過度な負担なく受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:universal health coverage)は世界的な共通目標になっています。早くから国民皆保険を達成した我が国が国際援助として貢献できる分野です。資金(カネ)と合わせてICT活用を含むモノ、医療に関わる人材(ヒト)の充実が求められています。HIAS Healthでは国際協力機構(JICA)・セネガル政府と連携して、セネガル共和国におけるUHCに向けた取り組みのモニタリングに取り組んでいます。その検証結果を踏まえつつ、アジア諸国における国民皆保険事業の検証に発展させていきます。

HIAS Health研究員・HIAS Health客員研究員