『週刊社会保障』第3331号(9月1日号)にHIAS Health 研究員の荒井耕教授(一橋大学大学院経営管理研究科)、古井健太郎HIAS Health 客員研究員の論文「医療法人有床診療所の労働生産性への影響要因―労働生産性向上の推進のための比較枠組みの明確化―」が掲載されました。
医療界でも人手不足を背景に労働生産性向上の必要性が高まっているため, 労働生産性への影響要因を分析し, 生産性向上促進のための比較参照枠組みを明確にし, 比較参照値を提供していくことは重要である。 しかし従来, 厚生労働省は, 病院を対象には経営上の比較参照値としうる指標結果を公表してきたが, 有床診療所を対象としたものはない。 そこで今回は, 有床診療所群を対象として影響要因を分析して比較参照枠組みを明らかにすることを試みた。その結果, 今回取り上げた諸属性のうち専門医療機能と在宅医療機能の有無を除くすべての属性が影響を与えていることが判明し, これら各属性の観点から有床診療所群を区分して比較参照値を提示する必要があることが判明した。 また, 職員当たりでの機器設備建物等ハードの充実は事業収益ベースの労働生産性向上には資するものの, 経営的(職員当たり事業利益)にはむしろ悪影響が示唆される一方, 職員当たりでのICT等ソフトの充実は事業収益ベースの生産性向上に貢献しつつ経営的にも悪くないことが示唆されたほか, 総資産額に基づく経営規模が労働生産性向上に非常に効果的であることが明らかとなった。
荒井耕・古井健太郎(2025)「医療法人有床診療所の労働生産性への影響要因―労働生産性向上の推進のための比較枠組みの明確化―」『週刊社会保障』第3331号(9月1日号)pp.48-53.
参考:『週刊社会保障』第3331号(9月1日号) <外部リンク>