HIAS Health研究員の荒井耕教授(一橋大学大学院経営管理研究科)の著作『病院管理会計の効果検証:質が高く効率的な医療の実現に向けて』(中央経済社)が刊行されました。
 
荒井先生_著書書影_9784502318016中央経済社
発行日 2019年9月6日
A5判/264頁
ISBN      978-4-502-31801-6

 

この本の内容

超高齢社会の到来と高度高額な医療技術の登場を背景に医療財政は悪化している一方で、医療の質や安全性に対する国民の関心が高まっているため、質が高く効率的な医療の提供が求められている。そのため、病院では各種の管理会計手法を適切に活用することが課題となっている。しかし一般産業界中心に発展してきた管理会計が、非営利セクターである病院界でも有効なのか、またより有効にする実践はあるのか、従来十分に明らかにされていない。そこで本書では、病院における管理会計の有効性を検証した。その際、採算改善という財務的効果だけではなく, 医療の結果(質)やその実現に至るプロセスに関わる効果についても検証を試みた。その結果、病院でも管理会計は効果を有しており、管理会計は、経営環境変化に伴う時代の要請に病院が対応していくための有効な手段であることが明らかとなった。
 
管理会計と組織業績との関係性に関する従来の研究は、営利企業を対象とし、財務業績との関係性に限定されてきた。本書は、非営利セクターである病院を対象に、財務業績だけでなく非財務業績も含めて、初めて本格的・総合的に、管理会計と組織業績との関係性の解明に取り組んでいる。

目次から

第1章管理会計の必要性の高まりと効果検証の必要性 -本書の背景と目的-
第2章責任センター別損益業績管理の採算改善効果の検証 -医療法人での有効性評価-
第3章損益業績評価に対する責任センター管理者の受容性を高める管理会計実践の検証
補論1病院内の部門の財務的業績による部門長評価・報酬連動の実態
第4章医療法人内の施設事業別損益計算管理の効果を高める実践の検証
第5章部門別損益計算管理の効果の検証 -DPC対象病院での有効性評価-
第6章部門別損益計算管理の効果の経年的検証 -公立病院での有効性評価-
第7章予算管理の効果の検証 -部門別及び病院全体の予算管理の有効性評価-
第8章病院全体予算管理による業績評価に対する病院長の受容性を高める予算管理実践の検証
第9章DPCサービス別管理会計の効果の検証 -サービス別損益管理及び価値企画の有効性評価-
第10章バランスト・スコアカードの効果を高める実践の検証
第11章事業計画の効果を高める実践の検証
補論2業務実績指標管理の採算改善効果の検証 -事業計画等での管理事項の適切性の検証-
終章管理会計の有効性 -本書の検証結果のまとめ-
 
本書の書評(慶応義塾大学の横田絵里教授による)が『企業会計』Vol.72 No.4、120頁に掲載されました。
参考URL : 『企業会計』